天然和紙糸が生まれる場所 |日本の職人が紡ぐ手仕事

備後の気候に育まれ、とりわけ夏にもっとも豊かに撚糸される希少な和紙糸。
撚糸(ねんし)とは、和紙を細く裁断したスリット糸を複数ねじり合わせ、強度を高めて一本の糸に仕上げる工程のことです。
生産量はごくわずかです。 創業98年。繊維の地・備後で代々受け継がれてきた撚糸の技術を、4代目の光成明浩さんが新たな視点で進化させました。自動車産業から家業へと飛び込んだ異色の経歴を持ちながら、固定観念に縛られず挑戦を重ねたことで、和紙糸は今や国内外から注目を集める素材へと成長しています。

一本の糸を仕上げるまでには、想像以上の時間と手間がかかります。複数の歯車を組み替えて機械を整え、仕上がりを確かめながら幾度も微調整を繰り返す。効率よりも品質を優先する姿勢が、この糸に独自の風合いと深みをもたらしています。

その工程を支えるのは、熟練の職人たちの経験と勘。糸の状態を見極め、まるで対話するように撚り上げていきます。職人にとって糸は、命を吹き込んだ子どものように大切な存在。愛情と技術の積み重ねが、和紙糸に生命を宿し、特別な一着へとつながっていきます。